アメリカ同時多発テロ事件に寄せ

連日の World Trade Center の惨事及び同時テロの報道に、
眠れぬ日々を過ごしています。
何度も繰り返し映し出されるニュースを見ながら、
暴力という形によって自己顕示をする愚かさと悲しみを感じ、
思わず悔し涙が溢れてきました…。

そしてこの想いは、
世界中の方々の共通する想いとも推察いたします…。


私のつれはパキスタン籍でムスリム
(男性イスラム教徒の呼称。女性はムスリマ)です。
事件当夜、遅く帰宅したつれに
「アメリカで、テロが…」と伝えたところ、
「ムスリムが、そんなことをするわけがない!」と、
強いショックを受けていました。

その時の動揺を隠せない態度が、
惨劇から数日たった今も脳裏に焼きついています。

事件後、
イスラエルの大学で教鞭をとっていらっしゃる日本人女性の方と、
メールを通して情報交換させていただきました。

身近にムスリムの友人が大勢いらっしゃるという彼女
(おつれさまがユダヤ教徒)曰く
「ムスリムの彼/彼女たちも
日々の生活の中で心からサラーム(平和)を求めている。」

「イスラエル国民も、
BBCやCNNから流される映像について冷静に受け止めている。」
とのことでした。

また、イスラム関係のMLへも、
以下のようなノンムスリム
(イスラム教徒ではない方)からの投稿がありました。

「今日、テレビを見ていて一番ショックだったのは、
パレスチナの子供達が喜んでいるシーンでした。
イスラエルとパレスチナの長年の対立関係はわかりますが、
それにしても子供達にプロパガンダを仕掛ける指導者者層や親達がいることには、
いたたまれない思いがします。
誰かが勇気を持って断ち切らなければ
いつまでたっても戦争は終わりません」。

「相互に理解して、助け合わないなら、
 むしろ人類など丸ごと全滅した方がいいでしょう」。

この投稿を拝見して、考え込んでしまいました。

私は日頃、「理解」ということの難しさを痛感しています。

そして人間は、
むしろ(完全に)「理解」できないという前提から
関係づくりをはじめた方がいいのではないか、と
思ったりもしています。

「『からだ』と『ことば』のレッスン」等の著作物もあり、
独自の理論に基づく演劇創造や、
障害者療育に取り組んでいる舞台演出家、
竹内敏晴(たけうちとしはる)氏は、

「理解は、
 自分の今いる状態や価値観を壊す作業を伴なう」

とおっしゃっています。

私自身、
未知なもの、異質なものに対して、
違和感や嫌悪感を感じてしまうもの事実です。

しかし、
そこから生まれる葛藤や衝突から
新しい価値観を生みだすことのできる知恵を人間は持っている、
と信じています。

報道によると、
アメリカをはじめ、カナダやオーストラリア在住のムスリム(マ)や
アラブ系市民が暴行やいやがらせを受けているとのことです。
施設に銃弾が撃ち込まれたりアラブ系の子どもたちが乗るスクールバスが
攻撃を受けたりした地域もあるそうで、
投石や「みんな死ね」などの言葉による脅迫も多発しているそうです。

短絡的かもしれませんが、
関東大震災時に朝鮮の方々へ向けられた
暴行・謀殺を連想してしまいます…。

しかし、人類は同じ過ちを繰り返すほど愚かなのでしょうか?

歴史から学ぶことは難しいのでしょうか?

日本のマスコミでは、
様々な憶測、情報が飛び交っています。

「オサマ・ビン・ラディン」をはじめ、
「タリバン」や「パレスチナ」等の
「西欧 vs イスラム圏との2極対立」という構造が、
主流となって語られています。

つれ同様、
私自身もテロリズムと暴力を強く憎みます。

イスラムの「ジハード」(聖戦と訳す)という価値観が
強調されることも多いようですが、これは、
一部の「原理主義者・勢力」の価値観であることを
ご理解いただきたい、と思います。

しかし、イスラム圏において、
この「原理主義」が支配している国があるという事実も、
同じムスリム(マ)として、悲しむべき事実であり、
改善していかないければならない課題です。

このような事態の中、
私たち日本におけるイスラム関係者とノンムスリムの方との対話が、
最も大切なのだと痛感しています。

そして、
この対話の過程が、
お互いの「理解」の礎にならんことを、
私たちは心から祈っております。

多くの個人的ムスリムは、私たちの挨拶である
「アッサラーム・アレイクム」
(貴方の上に平安あれ)の「サラーム」にもありますように、
「サラーム」=「平和」を強く強く望んでおります。

今回の惨劇で犠牲となったすべての方々のご冥福と
事態の速やかな調査を祈りつつ、
イスラムに関係している日本人として、
さかんに報道されている事件の背景を説明していく必要性と責任を感じています。

サラーム


ご感想をお寄せください。この対話が平和の礎であることを信じて